地頭力を鍛える

地頭力を鍛える(細谷 功)

地頭力を鍛える

フェルミ推定の考え方、応用の仕方について勉強中。

本書は、知識やコミュニケーション能力とは別の「考える」を「地頭力」と定義し、その地頭力を鍛えるツールとしてのフェルミ推定の概念や方法について紹介されています。

キーワードは、下記3点

  • 結論から考える:仮説思考力
  • 全体から考える:フレームワーク思考力
  • 単純に考える:抽象化思考力

イメージとしては、「遠くから近くへ」という感じ。

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地頭力とは

一概に「頭がいい」といっても、色々な種類の頭の良さがあります。

  • 知識が豊富な「物知り」タイプ
  • 対人感性が高い「機転が利く」タイプ
  • 思考能力が高い「地頭型」タイプ

「必ずどれかのカテゴリーに分類される」というよりは、「それぞれのファクターをどのくらいずつ保有しているか」という感じで、全体的な「頭の良さ」が定義されます。

かつての日本の入試や入社試験では、「知識力」や「対人感性力」を重視した問題になっていました。

しかしながら人工知能(AI)が発達し、情報が溢れる昨今、「地頭力」は最も必要とされる能力といえるでしょう。

そして意外なことに、この「地頭力」は鍛えられるというのです。

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地頭力のベースとなる3つの力

この地頭力のベースとなる重要な力が、冒頭で紹介した

  • 結論から考える:仮説思考力
  • 全体から考える:フレームワーク思考力
  • 単純に考える:抽象化思考力

になります。

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フェルミ推定とは

以前、「まんがでわかる 地頭力を鍛える」でも紹介しましたが、

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まんがでわかる 地頭力を鍛える

フェルミ推定の語源となった人は、イタリア・ローマで生まれ、アメリカ・シカゴで教鞭を執った「エンリコ・フェルミ(1901-1954)」氏の名前に由来しています。

彼は「原子力の父」として知られるノーベル賞物理学者で、身の周りの情報を元にした物理量の推定に非常に長けていたとのこと。

教鞭を執ったシカゴ大学で、学生に

「シカゴのピアノ調律師は何人いるか」

と質問し、身の回りの情報でさっと推定することの重要性と面白さを伝えました。

 

インターネットを調べればすぐに情報が手に入る時代になり、人々は自分で考えるよりも先に検索エンジンに手を伸ばしてしまいますが、

「調べたくなる気持ちをぐっと我慢して、自分の頭でおおよその概算がとれるようになろう」と本書ではフェルミ推定の方法と、その基本概念、日常での応用について、大変わかりやすく説明されています。

 

本書では、例として

「日本全国に電柱は何本あるか」

という課題が出されています。

私は、

  1. 大学から地元まで車で帰省したときの時速と時間
  2. それを元にした日本の総面積
  3. 身の回りでは大体20m間隔くらいで電柱が立っている、と仮定
  4. 都市部と地方での電柱の密度の違い、山林の割合
  5. それぞれの面積比で概算

という流れで計算したところ、4,400万本、という数字が割り出されました。

電力会社とNTTで公開されている実際の電柱の本数は、3,300万本とのこと。

 

なんと、適当に計算しただけで、本当に誤差1桁以内の数値がでてしまいました

これは面白い!

「日本全国の電柱の数」なんて、いきなり聞かれたら

「そんなの調べないとわからないよ。」

と答えたくなりますが、実際には、調べなくても今まで暮らしてきた情報だけで、大まかな数字は出せてしまうのです。

 

そしてこのような質問に「下1桁、2桁の数値の誤差」は全く重要ではありません。

 

こんな感じで、「手元にある情報だけで、ざっくりとした数値を出せる」ようになれば、

仕事の質が劇的に変わるのは、想像に難くありません。

フェルミ推定で鍛えられる3つの力
  • 結論から考える力(仮説思考力)
  • 全体から考える力(フレームワーク思考力)
  • 単純に考える(抽象化思考力)

「結論から考える」仮説思考力

本書でいう仮説思考力とは、

  1. 今ある情報だけで最も可能性の高い結論(仮説)を想定し、
  2. 常にそれを最終目的地として強く意識して、
  3. 情報の制度を上げながら検証を繰り返して仮説を修正つつ最終結論に至る

思考パターンとのこと。

 

ポイントは、下記3点。

  1. どんなに少ない情報からでも仮説を構築する姿勢
  2. 前提条件を設定して先に進む力
  3. 時間を決めてとにかく結論を出す

「終わり」から考える

多くの人達は、これからすべきことを順を追って考えていく、という順行的な考え方で物事を行くことが多いです。

しかしこの順行的なベクトルをすべて反転させ、

  • 「ゴール」から
  • 「終わり」から
  • 「目的地」から
  • 「将来」から
  • 「やるべきこと」から
  • 「目的」から
  • 「相手」から

物事を考えていかなければなりません。

 

この究極の例は、私が最も感銘を受けた本「7つの習慣」に書かれていました。

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7つの習慣

第2の習慣に、「終わりから考える」というものがあるのですが、

ここでいう「終わり」は、「自分のお葬式を考える」というものでした。

自分の葬式で、家族や親戚はどう自分を偲ぶだろうか、弔辞はどのように読まれるだろうか……

「弔辞ではこのように言ってほしい。」

その理想の最期を想像し、それに向かって毎日努力していくのだそうです。

日常でも仕事でも同じこと。

最終ゴールをしっかり見据えた上で、そのゴールにとって必要な事柄をこなしていくのです。

時間内に答えを出す

もう一つ重要なことは、

「限られた時間でとにかく答えを出す」ということ。

3分なら3分、3時間なら3時間、3週間なら3週間なりの答えを出すことが大切です。

 

「時間がないから」「情報がないから」

と言い訳をする自分から今すぐ抜け出し、

 

「与えられた時間と情報の範囲内でとにかく答えを出す」

という姿勢を身につけねばなりません。

「全体から考える」フレームワーク思考力

フレームワーク思考は、

  1. 対象とする課題の全体像を高所から俯瞰する全体俯瞰力
  2. とらえた全体像を最適の切り口で切断し、断面をさらに分解する分解力

の2つで構成されています。

課題の全体像を高所から俯瞰する全体俯瞰力

例えば、駅で待ち合わせをした二人が携帯電話でお互いの位置を確認する場面。

同じ「駅から見て左側にタクシー乗り場があり、その先にデパートがあり……」と話していますが、お互いの姿は見えません。

実はこの二人、駅の西口と東口という、正反対の場所にいて、同じように「駅から見て左側に……」と確認していた、という種明かし。

駅の上から鳥瞰的に二人の姿を眺めれば、「お互い駅を挟んで反対側にいる」とすぐわかりますが、当の本人達にはわかりません。

 

この例で、駅の上から鳥瞰的に眺めた場合が「フレームワーク思考」、つまり「絶対座標」の考え方。

そして、地上で携帯電話を片手にお互いの位置がわからなくなっている状態が、「フレームワーク思考でない」ということ、つまり「相対座標」の考え方です。

 

視点を、「高所」「遠く」から俯瞰し、その後「ズームイン」していく、という感覚が求められます。

とらえた全体像を最適の切り口で切断し、断面をさらに分解する分解力

全体を俯瞰した後は、その全体を「最適の切り口で切断する」必要があります。

以前紹介した「イシューからはじめよ」でも触れましたが、

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イシューからはじめよ

「モレなくダブりなく(MECE:Mutually Exclusive Collectively Exhaustive)」分類することが重要です。

この「最適の切り口で」というのが、ちょっと難しく、経験が必要になると思います。

私もトレーニングが必要です。

とりあえず、本書に

「その他」のカテゴリーを作ってはいけない

と書かれていたので、メインブログの方の「その他」のカテゴリーの名前を変更しました。

ブログのカテゴリー分類だけでも、「MECE ではない部分がある」と気付かされたので、今後ちょっとずつ修正していこうと思います。

全体最適をボトルネックから考える

この考えは私も非常に重要だと思うのですが、

なにかのプロジェクトがうまくいかないとき、必ずボトルネックになっている事柄が存在します。

全体パフォーマンスの制度、アウトプットの質や量というものは、ボトルネックのパフォーマンスで決定されるのです。

私自身の仕事でも大いに心当たりがあるのですが、当時はそれに気づかず、空回りしていました。

今後何かを進めるときには、必ず「ボトルネック」を意識していきたいと思います。

「単純に考える」抽象化思考力

抽象化思考力とは、

  1. 対象の最大の特徴を抽出して「単純化」「モデル化」した後に
  2. 抽象レベルで一般解を導き出して、
  3. それを再び具体化して個別会を導く

という3ステップの思考パターンのことをいいます。

これは、科学を仕事にしている人達なら、皆さんよく心得ていると思います。

例えばヒトの体のある機能について知りたい場合、体の中のメカニズムは複雑過ぎて、様々な要因が実験結果を混乱させます。

この場合、細胞の系に落とし込んだり、染色体の数が少ない線虫や酵母で確認したりと、

「環境をできるだけ単純化して観察する」ことで、目的のものが見えてくることが多いです。

このように「単純に考える」という考え方は、科学の世界に限らず、ビジネスの世界でも重要のようです。

何か問題が生じているとき、

  1. その具体的な問題を、抽象化し、問題の本質を見極める
  2. 抽象化した本質に対する解決策を考える
  3. その本質的解決策を、もう一度具体事例に適応し、具体的問題に対する解を導く

というステップを経ることで、

  • 本当に重要な問題はなにか
  • 真の解決策はなにか

が見えてくるのです。

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フェルミ推定の習得が処方箋となり得る人達

ここは個人的に特にグサリときたので、書き留めておきます。

どんな症状のタイプにフェルミ推定が有効か、という話です。

仮説思考力の習得を必要とする人達

・検索エンジン中毒

頭が働くより先に手が動いて、検索エンジンにキーワードを入力し、検索結果を鵜呑みにしてそのまま答えとしている。

結果として、自分で考える力が退化している。

・完璧主義

品質のために締め切りをよく遅らせる。

不十分な情報では作業に着手できない。

・情報コレクター

仮説より先に情報を集め、結果として使われない情報を山のように収集している。

ときに、情報の洪水に溺れて自分が何をしているのかわからなくなっている。

フレームワーク思考力の習得を必要とする人達

・猪突猛進

周りが見えずに自分の視野だけを頼りにひたすら猛進し、ときに周囲からストップがかかる。

他人への説明や文書がひとりよがりでわかりにくい。

・セクショナリズム

全体の最終アウトプットを意識せずにとにかく自分の範囲だけを完璧に仕上げることに専念する。

その結果として、必要以上に詳細なことに労力を費やしている。

抽象化思考力の習得を必要とする人達

・経験至上主義

自分の経験のみを行動の拠り所としている。

自分の置かれた環境を実態以上に特殊だと思っており、他社から学べることはないと思っている。

全体の感想と今後の方針

自身を省みると、先の「フェルミ推定の習得が処方箋となり得る人達」の特徴のうち、前者3つの「仮説思考が必要」な人物に当てはまると思います。

フェルミ推定の考え方を身に着け、「仮説思考」人間になれるよう、日々精進していきたいです。

 

本書に、

「仮説思考しているヒトの口癖は『落としどころ』『うそでもいいから』」

だと書かれていましたが、私の周りには、これを口癖にする人達が何人かいます。

その中でも最も当てはまる人物は、私の所属するラボのPIです。

彼女は、サイエンスのPhDを取得した後に ラボ経営のためにさらにMBAを取得しており、このような思考力について勉強してきていたのかもしれません。

身近に良いお手本がいるので、今後は、この仮説思考の考え方に照らし合わせながら、彼女の言動を観察していきたいと思います。

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