子供の頃、福永令三さんのクレヨン王国シリーズをたくさん読みましたが、この「クレヨン王国いちご村」の中に収録されている、「レールの中のスミレ」というお話は、大人になってからもよく思い出します。
レールの中のスミレ
小さなスミレが一輪、線路のレールに敷き詰められた石たちの隙間で生きていました。
石たちは、いつも不機嫌で押し黙っていました。
スミレは独り言のように、お日さまの話など、明るい話題を振りますが、石たちが返事をすることはありません。
けれども、スミレは明るい話を続けます。
”たとえ、へんじがなくとも、じぶんのおしゃべりが、なんのたのしみもない石たちのなぐさめになっていることを、よく知っていたからです。” (レールの中のスミレより)
ある日、モンシロチョウがやってきて外の世界の話を聞いてから、スミレの心境が変わるのですが・・・
一時期、家族の中で誰かがイライラしていて、場の空気が悪いと感じる時期がありました。
その場にいてキツイ言葉を浴びせられるのが辛く、相手に対して理不尽に感じる事もありました。
でもその時、私は自分の心の中に、このスミレを住まわせようと心に決めました。
強いストレスがかかっていて苛ついたり、キツイ言葉を口にしてしまう時、その人も自分でわかっているはずです。
たとえわかっていなくても、いいのです。
私が場を和まそうと努力する行為は、その場では功を奏したように見えなくとも、きっと誰かの心に静かに光を投げかけ、それが少しずつ積まれていくのだ。
そう信じ、私は心の中のスミレによく話しかけていました。
このお話の他にも、ちょっと切なくなるようなお話が12話集められています。
子供達に読んで聞かせた時、幼稚園や小学校低学年の子供達からは、悲しいお話は聞きたくない、と言われました。
小学校中学年の長男は、「素敵なお話だね。」と言ってくれました。
小さい子達にはまだちょっと早かったかもしれませんが、もう少し大きくなってからもう一度読んでもらいたいと思います。
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