シン・ニホン

シン・ニホン(安宅 和人)

シン・ニホン

この国は、もう一度立ち上がれる。

 

以前、安宅さんの著書「イシューから始めよ」を読んで、たいへんな衝撃を受けましたが

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イシューからはじめよ

大変な話題になっているこちらの本は、興味はあったものの、読むのを先送りしていました。

理由は、扱っているテーマが大きすぎて、自分事でいっぱいいっぱいになっている今の私には、too much と感じてしまうんじゃないかと、ちょっと心配な気持ちがあったからです。

 

でも、実際に読んでみると、自分の現状に当てはめ、「これから自分ができることは何か」を強く考えさせられました。

 

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日本が如何に停滞しつづけているか

本書では、

  • 序盤:日本が如何に停滞しつづけているか
  • 中盤:日本にある強い可能性について
  • 終盤:未来に向けたメッセージと、現在の著者の活動について

という内容で構成されています。

序盤の、「日本が如何に停滞しつづけているか」については、正直読むのが辛いと感じる事もありました。

アメリカで感じている自分自身の敗北感に似ている部分があったからです。

本書の中で出てくる、アメリカ、中国、韓国などの描写も、私が今感じている感覚ととても近いと思いました。

  • アメリカはプラットフォームを作るのが上手い
  • 中国は、産業革命や阿片戦争の前、一大大国だった。数千年たった今、その力を取り戻そうとしている
  • リーマンショック以降、日本だけが停滞しつづけている

私が現在所属する大学にも中国からの留学生はたくさんいるのですが、皆とても優秀で、大変意欲的です。

数年前に日本にいた頃、台頭する中国や韓国に対して良くない印象を持っている同僚もいましたが、私は、日本はそんな事を言っていられるような立場ではないと思います。

彼らと協力し、彼らから学ぶ事で、自分たちの可能性を広げていく事が、大切なんじゃないかと思うのです。

データ ✕ AI ✕ 若者 の無限の可能性

序盤で、ここ十数年の間に、先進国の中で日本だけが停滞している根拠を「これでもか」と見せつけられましたが、

では、「日本に未来はないのか」と問われると、著者は力強く「ノーだ」と答えます。

それは、これからの未来に、日本の可能性を強く感じているからです。

そこで鍵となるのが、本書のサブテーマでもある

「データ ✕ AI」

と、

「若者の力を解き放す」

事。

現在の日本では、貯蓄のない世帯が増えており、才能のある若者たちが埋もれてしまっているとのこと。

才能のある人たちが出てくるのは確率論で、活躍する人たちの中のほんの数%の人たちに天才がいる……だから、活躍する人たちの全体の数を増やさないと、天才も生まれてこない、とのこと……納得です。

女性の伸びしろ

また、本書では「女性の伸びしろ」にも触れられていました。

家電製品の普及で、家事が楽になったものの、それにより捻出された時間は、女性の社会進出ではなく、男性の労働時間に回っているとのこと。

 

私は以前のラボで、教授と今後の方針について話し合いがあった時、

「研究者としてのキャリアを続けたいが、子どもは3人ほしい。」

と話したのですが、

「それは……欲張りですね。」

と言われました。

つまり、

「キャリアを追求したければ、子どもを3人産み、育てる事は難しい。どちらかを選んだ方がよい」

ということ。

テクノロジーの発展や女性の社会進出という概念が普及した今でも、日本の現状では、それが事実なのだと思いました。

 

私は自分が天才だとは思いませんが、私くらいのレベルの女性たちがのびのびと活躍できる社会になれば、日本はもっと発展するように感じています。

予算配分の見直し

本書では、国の財政の考え方について、鋭いメスを入れています。

日本は、目先の事ばかりを優先して、国力の要ともいうべき科学技術予算を削ってきています。

国の競争力に直結する科学技術促進に各国が力を入れる中、日本だけが技術革新ゲームに参加できていないとのこと。

これは、多くの人たちが声を上げている事ですが、私も全面的にそう思います。

正直、今の日本では十分な研究ができず、優秀な人たちはみんな海外に流れていってしまうのです。

これは本当にもったいないことですし、このままでは日本が衰退するのは誰の目にも明らかです。

 

「でも、本当に予算が足りないんだ……」

そんなお役所の人たちの言葉を遮るように、安宅さんは改善策を提示していきます。

その改善策については、立場によって賛否両論あるかもしれませんが、私個人としては、安宅さんの意見に全面的に賛同します。

 

老若男女、全ての世代の人たちがこの本を読み、今後の日本のあり方、予算配分について考えてもらいたいと思いました。

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