私の中で「ユダヤ人」と聞くと、
- 天才が多い
- 交渉が上手
- お金持ちで、政治・経済に影響力のある人が多い
というイメージがあります。
「そのユダヤ人3000人にYESを言わせた技術って、なんだろう?」
と興味を惹かれ、読んでみました。
読んでみると、内容はタイトル以上に面白かったです。
「3000人のユダヤ人にYESと言わせた技術」のあらすじと感想
著者のマーク富岡さんは、純日本人。
なぜ「マーク」という名前がついているのかは、本書の最後に説明されています。
この本は、著者がまだ「マーク富岡」でなかった時代の失敗談から、
世界一流の「交渉人」として世界を飛び回るようになった過程、
そして、世界中のニゴシエーター達との交渉の機会で得た「学び」を書き留めた本です。
ユダヤ人に学べ!どんな相手も「手玉にとる」技術
第一章では、マークさんが、あるビジネスの交渉の場で一人のユダヤ人「マイヤー氏」と出会い、彼に圧倒された話が書かれています。
交渉の場はドイツ。マイヤー氏は、アメリカ生まれで、ドイツを拠点に仕事をしているユダヤ人。
マークさんはドイツの会社に足を運び、会社の重役と交渉人のマイヤー氏と三人で交渉を行います。
その際、
- ドイツのホテルでの心配りや話のススメ方
- 相手の気持ちをほぐす技術
- お互いがWin-Winの関係になれる方法 etc...
マークさんは、要所要所でマイヤー氏の凄さに圧倒・魅了され、彼にノウハウを教えてもらうよう頼みます。
- 「やわらかなおもてなし」が、ビジネスの序曲となる
- 「稼ぐ知恵」だけでなく「稼いでも恨まれない知恵」をもつ
- 相手について知っていることより先に、自分について笑って話す
- 「三角ポジション」と「ナビゲーター効果」を知っておく
- 「先生目線」で相手に一目置かせる
- 「アジェンダ作戦」で時間感覚を磨く
- 相手に先に話をさせ、主張を論理的に組み立てる
- 事実と自分の意見を区別して一目置かせる
- 数字をスラスラ操って一目置かせる
- 「空腹を満たす」ためではなく「相手を知る」ためのランチタイム
- つねに自分が有利な場所で交渉する
- 身なりは玄関、カバンはオフィス
- 「舌はこころのペンである」 etc...
読者の私からみると、マイヤー氏の凄さに気づくマークさんもかなり凄腕の交渉人なんだろうと思います。
やはりそういう人達同士で通じるところがあるのでしょう。
交渉後も二人で食事をし、翌日のフライトまでの間、マークさんはマイヤー氏の手書きのノートを貸してもらいます。
そこには、マイヤー氏が長年の交渉で培ってきた、交渉術のノウハウが綴られていました。
どんな国でもOK!海外でたたきこまれた「負けない」技術
第二章では、著者のマークさんが、海外のニゴシエーター達との交渉から学んだ知恵が綴られています。
世界を相手にする日本人が抑えておきたい三つのポイント
- わからないことは「わからない」という
- あらゆる意見に対して「聞く耳」をもつ
- 「思っているだけでは伝わらない」と知る
これら3点は、交渉の場にとどまらず、私が日常的に行っているカンファレンスや講演の聴講などでも重要なポイントだと思います。
各国のニゴシエーターの教え
- アメリカ人から学ぶ「一気に主導権を握る」技術
- イタリア人から学ぶ「場の雰囲気を盛り上げて成功する」技術
- スペイン人から学ぶ「ワインと食事と会話で分かり合う」技術
- アラブ人から学ぶ「気に入られて成功する」技術
- 韓国人から学ぶ「まねをオリジナルにしてしまう」技術
- インド人から学ぶ「質問攻めで疲れさせ、承諾させてしまう」技術
- 中国人から学ぶ「リスクを見極める」技術
- ドイツ人から学ぶ「間違いでも主張を続けて納得させる」技術
- フランス人から学ぶ「勝手気ままにわがままを通す」技術
- ユダヤ人から学ぶ「相手の鏡になりきる」技術
各国の文化や常識の違いが色々と紹介されていて、驚きとともに愉快な気持ちになりました。
「自分に取り入れよう」と思う内容も多い反面、「ここは反面教師としよう」と思う内容もあり、いづれにしても大変勉強になりました。
世界のどこでも通用する「海外出張を楽しむ」技術
- 日本文化を知っておく
- 無難ネタとNGネタを知っておく
- ジェスチャーはメッセージと心得よ
- 成果を出すことだけ考えず、海外出張を楽しむ
- 飛行機は可能な限り通路側の席を取る
- 車でいきなり後部座席に座らない
- ところかまわず部下を叱らない
こちらも、ちょっとした事ばかりですが、結果に大きく影響してくるように思います。
自分でも気がけていた内容もあれば、気づいていなかった内容もありました。
気づきていなかった項目も、今後心がけていきたいと思います。
交渉のゴールを決める!手ごわい相手にも「YES」と言わせる技術
第三章は、著者が実際の交渉の場で使っているノウハウについて紹介しています。
- 交渉が下手な「病因」を突き止めておく
- YESと言わない理由3つ
- 準備がすべて(80:20の法則)
- 目的とゴールははっきりと紙に書いておく
- 「これ以上は譲れない」という点を明確にしておく
- 逆転ホームランは禁じ手!「大事なこと」から真っ先に言う
- 決裂もじさない場合は、ノートを閉じて席を立て
- 即答するな!あとで答える勇気をもて
- 知ったかぶりをして、強気に出てはいけない
- 小出しに要求を出して合意に近づける技術
- 相手が断りそうな条件を先に出し、YESと言わせる技術
- 相手にYESと言わせて、満足させる技術
- 格言や賢人の言葉で納得させ、YESと言わせる技術
- 相手が迷いはじめたら、決断できる「呼び水」を出す
- 相手が最後に迷っていたら、立ち上がって握手してしまえ
上記のいくつかは、やはり交渉の場に限らず、私の周りの環境でも大いに参考になる事柄ばかりでした。
私の場合、若輩すぎて、これらのノウハウを使いこなせる気がしませんが、
常に意識し、少しずつ近づいていきたいと思います。
交渉のあともビジネスは続く!相手も自分も満足する「WIN-WIN」の技術
「交渉は駆け引きだが、勝ち負けではない。」
交渉を行う人達はお互い人間同士であり、結局は「人間同士の付き合い」という事です。
その場の交渉で自分の思うような結果が得られても、相手にとって後味の悪いものだったら、
その後の関係に大きなヒビが入り、長期的には失敗ということになります。
相手も自分も満足し、末永く付き合う関係を築くために必要な技術とは?
- 自分がしてほしいことを、先に相手にしてあげる
- お互いが納得できる代替案を見つけ出す
- 「勝てたかもしれない」と思わせながら勝つ
- 立場を置き換えれば、それ以上攻められなくなる
- 「聞き上手」とは日本が世界に誇るWIN-WINツール
- 「WIN-WIN質問力」で、警戒されずに本音を引き出せ
- 「売られたケンカ」を今すぐ買ってはいけない
- 自由自在に「流れを変える」技術
- 「お金におおらか」だと尊敬されないと知っておく
- ビジネス+αの関係性をつくる
- WIN-WINを保証する契約書の作り方
- WIN-WIN交渉の「課外授業」
いずれの教訓も、非常にためになるものばかりでした。
「仕事と人間関係」というのは切っても切り離せないものであり、
「相手の立場でものを考えながらも自分の意見はしっかりと主張し、お互いが納得できる信頼関係を作る」
事が大切なんじゃないかなー、と思いました。
読み物としても面白く、自己研鑽書としても多くの学びが得られる一冊だと思います。